「自立自強」と「新しい資本主義」
2022/11/10
10月に、5年に1度の中国共産党第20回全国代表大会が開催された。習近平国家主席が、2期10年の慣例を破り異例の3期目続投となることが確実となった。米国が対中国半導体輸出を規制するなど、ハイテク分野での中国への牽制を強める中で、習近平主席は、科学技術強国建設にむけて、「自立自強」を唱えている。
日本では、岸田文雄首相が「新しい資本主義」を掲げている。これまでの新自由主義的な経済政策の下で生じてきた格差の拡大を是正し、成長と分配の好循環を作り出すことを目指すとしている。
黒船来航など欧米列強からの圧力を受け、文明や国力の差を痛感し、不平等条約に苦しんだ幕末から明治にかけての日本の政策は「富国強兵」であった。
池田隼人首相は「国民所得倍増計画」を掲げた。1961年からの10年以内に国民総生産を26兆円に倍増させて、国民の生活水準を西欧先進国並みに到達させるという経済成長目標であった。日本経済は計画以上の高度経済成長を遂げた。
田中角栄首相の「列島改造論」は、日本列島を高速道路、新幹線、本州四国連絡橋などの高速交通網で結び、集中しすぎた工場地帯から地方への分散、地方の工業化を促進、過密と過疎の問題を解消するというものだった。
「富国強兵」、「所得倍増」、「列島改造」という標語は、意味するとことがわかりやすい。だが、標語ができたからすべてが進むというものではないはずだ。人々に醸成されつつある問題意識と、それを捉えた政策の標語がマッチしたとき、世の中にダイナミズムを生み出すのであろう。
「新しい資本主義」と聞いて、その意味するところをイメージすることは難しい。威勢よく鼓舞される感覚が湧いてくるものでもない。危機感を呼び起こすものでもない。今の日本、多くの課題がありながらも人々はそこそこの暮らしを甘受し、熱量は低く、岸田政権も国民を煽るような標語を掲げる必要もないということか。ある意味よろこばしいことかもしれないが、この先が心配である。