日本の論点2025

日経大予測2025は、日経のコメンテーター編集委員らによる解説であり、日本の論点2025-26 大前研一は、プレジデント誌1年分を素材として書籍化したものだ。昨年これらの2024年版についてブログを書いたのが6月30日だった。今年こそは年の初めに読もうと意気込んでいたものの、結局半年が過ぎてしまった。

日経大予測は、3つの重大論点として、「「ティア0.5」付加価値はソフトウェアに移る」、「壊れる世界秩序」、「「円弱」を招く経済構造」、を上げている。大前研一は、日本編の巻頭言に「観光産業こそが日本経済の起爆剤」、海外編の巻頭言に「台頭するポピュリストリーダーたち」を書いている。

書籍のほとんどの原稿はアメリカ大統領選挙の前に書かれている。トランプ大統領誕生によりその後の世界が大きく揺さぶられていることは、周知のとおりだ。

日経大予測は、日本経済にデフレを抜け出せる可能性が示され始め、「失われた30年」の出口をうかがうところまでこぎ着けたのは間違いないと書いている。思惑どおりに賃金と物価の好循環が生み出されれば喜ばしいが、今後のトランプ関税の影響が心配だ。

大前研一は、昨年に続いて巻頭言で観光産業に期待を寄せている。2030年に訪日外国人旅行者数6000万人、消費額15兆円とする政府目標はもっと引き上げるべきだと言う。勿論観光産業の発展に期待するのだが、技術分野においても頑張ってほしい。日本のデジタル赤字は5兆円。発展いちじるしい生成AIの技術開発において日本の存在感はない。残念なことだ。出遅れた日本企業は、AIを使いこなす技術に磨きをかける方向にシフトすべきだと大前研一は言う。

日経大予測に、「ポリアンナ効果」という心理学用語が出てくる。孤児になっても小さな喜びを探し続け、周囲まで幸せにする「少女ポリアンナ」の小説にちなむという。物事の良い面ばかりを眺め、悪い面から目をそらす現実逃避の行動は「ポリアンナ症候群」と呼ばれる。まさに日本ではないか。これでいいのか。

日本の名目GDPは2023年にドイツに抜かれて世界第4位になった。2025年にはインドに抜かれて第5位になる見通しだという。それでも政治家は、帳簿不記載問題、減税、補助金のバラマキ議論に終始していて、根本的な課題に取り組む様子が見られない。だからと言って、政治が悪い、政府が悪いと言い続けても始まらない。政治家を選ぶのは国民だ。

日経大予測の記事によれば、AIの性能を決めるパラメーターやデータの規模を一定量まで増やすと、それまで解けなかった問題が突如として解けるようになる「創発」という現象が現れるという。「失われた30年」の出口近くまで来たという日本経済、「創発」的スイッチが入るまで、国民一人ひとりが粘り強く、考えて、行動を積み重ねていけるかが問われている。

以上