ミスタージャイアンツ
ミスタージャイアンツ長嶋茂雄が6月3日に89歳で亡くなった。自分が小学生の頃はよくテレビのプロ野球中継に釘付けになっていた。野球中継が始まるテーマ曲が流れると心が躍った。派手なプレーににこやかな表情の長嶋は、当時の野球のみならず時代を盛り立てていた。幼児だった自分に母親が野球のユニホームに似せたシャツを作ってくれた。つけてくれた背番号は3だった。
今の小学生は、長嶋と聞いてどう思うのだろう。自分が小学生だったころに巨人監督だった川上哲治に対する感覚のようなものであろう。選手としての活躍を知らない。昔活躍したらしいお年寄りというところであろう。時間は大いに流れ去った。
日経新聞朝刊の「春秋」に長嶋にまつわる話が書かれていた。歌手のさだまさしが苦しい若い時代を過ごしていた時、それに耐えられたのは「自分の思い入れを託せるヒーロー長嶋がいたからだ」と振り返えっている。さだまさしにとって長嶋は、神であり仏であったということになる。
自分の思い入れを託すものから安らぎや、よろこび、力を与えられることがある。それは神や仏だけとは限らない。今を生きている世の中に思い入れを託し、そこから与えられるものを感じることもある。長嶋が選手として活躍していた時代は、粗雑だったかもしれないが、明日はきっと良くなるという希望に包まれていた。人々に活力を与える何かがただよっていた。
今やとかく先行きが心配になる課題がのしかかる。世の中が暗いと知らぬ間に人の心も沈みがちになる。今の若い人達はどのように感じているのだろう。難路を乗り越えて行かなければならない時代とは言え、若い人たちが明るくなれるような、明日はもっと良くなるという空気を感じられる世の中がきてほしい。
以上