イーロン・マスク

アメリカが揺れている。世界の民主主義はどうなるのか。8月10日(日)に放送されたNHKスペシャル「イーロン・マスク“アメリカ改革”の深層」は、かなり衝撃的だった。

アメリカ連邦政府の非効率を正し、歳出削減を目的とする政府効率化省DOGE: Department of Government Efficiency。トランプが大統領令により政府機関として設置し、任されたのは政府外部者のイーロン・マスクだ。既にUSAIDや教育省など政府の職員約20万人を解雇した。しかし、その実態は不明だという。イーロン・マスクによって送り込まれたシリコンバレーの28歳の起業家が実務の采配を振るっているらしい。アメリカという国で、こんな勝手なことが許されるのか。驚きを禁じ得ない。連邦議会は何をしているのだ。

その後、イーロン・マスクは案の定トランプ大統領とぶつかりDOGEを去った。そしてアメリカ党を立ち上げると表明した。イーロン・マスクを支持するのはテックライトと呼ばれる人々で、彼らの考えは過激だ。現在の社会は民主主義と言いながら、官僚や大学という権威ある組織により支配されており、この統治方法を変えなければいけないと主張する。望ましいのは、トップの2~3人で物事を決められる中央集権的統治方法であり、最も効率的で、一番うまくいくのは王政だと言う。

また、支持層には、より多くの子供を持つことを目指すプロナタリスト(出生主義者)が広がっている。番組で紹介されていた夫婦の思い込みの強さには不気味さを感じる。周囲の人々からの批判や攻撃から身を守るために、家の構造は複雑で、各部屋には銃が備え付けられている。

イーロン・マスクらは、官僚制度を廃止して、中央集権的統治を唱える。それは正しいのだろうか。ついて行けない。将来から現在を振り返れば、民主主義などというなんとも古い考え方の社会だったのだろうと思うことになるのだろうか。

AIが社会を動かすことになるのではないかという警鐘がある。AIを先導している人々の中にテックライトの人々が多いとなれば、AIそのものというよりも、AIを隠れ蓑にした彼らによって社会が支配される可能性が遥かに高いのではないかと恐怖を感じる。

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