SLIMとH3ロケット成功
1月20日、小型着陸実証機SLIMが月面着陸に成功した。ソビエト連邦、米国、中国、インドに続く世界5番目の成功だ。これまでの月面着陸の精度がkmオーダーだったものが、SLIMは100m以内の精度で成功した。今後月面での具体的対象について調査を行うためにも重要な成功であった。
2月17日には、H3ロケットの打ち上げが成功した。重量6.5トンの衛星を静止衛星軌道に打ち上げる能力がある。H3は性能向上と低コスト化を目指して開発が進められた。1段目エンジンLE-9は新たな開発により構造をシンプルにして、H2の1段目エンジンLE-7よりも部品を2割減らしながら推力は4割増になった。ロケットには宇宙専用部品ではなく自動車などに使われる民生品を多用する。H2Aの基本型で約100億円とされる打ち上げ費用を、H3では50億円を目指した。
今年は元旦に能登半島地震が発生し、重苦しい日々が続いている中で、SLIMとH3の成功は、気持ちを明るくしてくれるニュースだった。しかし、地震の被害で困難を強いられている人々が大勢いる状況の中で、成功を喜ぶ姿のニュースは控えられたのだろうか。SLIMの成功もH3の成功の報道も、快挙として伝えられたものの今一つ盛り上がりに欠けた印象である。
SLIMは着陸前に2基のうちの1基のスラスターエンジンが故障して、太陽電池パネルに太陽の光が当たらない姿勢で着陸した。搭載バッテリーの電源を切り、寒暖差270℃の月面の環境に耐えながら太陽電池パネルに日が当たるのを待ち、2月25日に地表との交信に成功した。H3も初号機の失敗を克服しての1年後の成功であった。困難を乗り越えての賞賛されるべき偉業だと思うが、はやぶさ2の時のようなフィーバーはなかった。
SLIMやH3の成功は、ただプロジェクトが成功したというそれだけではない。将来を担う子供たちに夢を与えてくれるインパクトは大きいはずだ。そのような観点から、テレビ放送ではもっと科学や技術に関わる報道を増やしてもらいたいものだ。
ロケット発射の瞬間には大勢の親子連れが集まっていた。マスコミの報道が盛り上がらずとも、日本中には感動してロケットや衛星、科学技術に興味を持った子供たちが大勢いたと信じたい。
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