ゲゲゲの鬼太郎
NHKのEテレで「100分de名著」という番組がある。その番組にはテキストがあり、本屋で買える。さまざまな名著が取り上げられていて、哲学書などの解説もやさしく書かれているので読み易い。
本屋で書棚を眺めていると、「別冊 100分de名著 「わが道」の達人 水木しげる」というのが目に入った。子供の頃にもそれほどマンガを読んだ方ではないが、ゲゲゲの鬼太郎のテレビ放送は印象に残っている。作者の水木しげるが戦争で片腕を失っていて、戦争を題材にしたマンガも描いていることは大人になってから知った。どこか心に引っ掛かるものがあった。
手塚治虫のマンガは生命尊重のヒューマニズムのマンガだそうだ。水木しげるのマンガは食うためにひたすら働き続けるしかないという現実的ニヒリズムと、戦場体験からくる、この世ははかない、虚無であるという根源的なニヒリズムだという。マンガも哲学的に見ると、そうなるようだ。
「総員玉砕せよ!」では、兵隊たちが死んで天国に行く修羅場と、ユートピアとしての南方の楽園が描きこまれているという。マンガの主人公であり水木しげるの分身であった丸山二等兵の最後は、目が飛び出し、唇も舌もふくれ上がってひどい形相で死んでいった。自分はこのマンガを読んだことがないのだが、タイトルとこの簡単な説明だけで湧いてくるイメージがある。
食べて、寝て、それが根本的な生きるということだ。それだけでありがたいと思わなければいけない。水木しげるは九死に一生を得てラバウルから引き揚げるとき、上司に現地に残りたいと言ったそうだ。文化や科学技術が進歩したと信じる現代に生きる我々は、本当に幸せになっているのだろうか。あまりにも多くの要らぬことに囚われ、悩みながら彷徨っているように思えてくる。
以上